日々の学び:呉明益『複眼人』

Amazonよりあらすじ
ある日突然、台湾に巨大な塊が押し寄せた。それは人間が捨てた「ゴミの島」だった――。夫と息子を失い絶望する大学教師と、言葉を解さぬ島の少年の出会いを軸に、多元的視点と圧倒的スケールで描く幻想小説。

高校時代の国語の先生のツイートを見て購入。『歩道橋の魔術師』はすでに読んでいたので、そんな感じかと思って読んだらテイスト違いすぎてびっくり。(『歩道橋の魔術師』は最近文庫版が出たので超おすすめ。マジエモ小説。)

「自然破壊」がテーマ。ちょっと魔術的リアリズムっぽさは残っていて、ゴミ島から漂流するアトレ少年と家族を事故で亡くしたアリスのやりとりは、美しい山の情景が頭に思い浮かぶ。ワヨワヨ島の夕暮れも。

波は浜辺に留まることはできない。格言と当たり前の事象は往々にして紙一重なのだと、アリスは思った。

「しかし記憶と想像はいずれ整理されねばならない。波がいずれ砂浜を去るように。そうしなければ、人間は生きてはいけぬ」複眼の男は続けた。「多くの生物が文字で記憶を留めることができない中で、唯一文字を書けるに人類に、課された代償なのだ」

最後のボブ・ディラン『A Hard Rain’s A‐Gonna Fall』がすごい沁みる。解説によれば、この曲は第三次世界大戦を懸念して歌われた歌だそうだ。『複眼人』の世界の中でも、終わりの音が頭に響いてくる。

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