日々の学び : アーリック・ボーザー『Learn Better』


本サイトでは”現役スポーツアナリスト”の「日々の学び」をブログとして書き残していきます。

数年前の奈良クラブ新体制発表会見でおすすめされていて読みました。当時の球団社長が学都としての奈良を代表するクラブとして、「学ぶ」ことへの理解としておすすめしていた図書だ。米Amazon2017年ベスト・サイエンス書を取っており、ページ数が多く重たいですが、とても良い本だった。これからの学習を体系的に考え、実行することができるようになりそうだ。

Ulrich Boser

米国先端政策研究所シニアフェロー。学びについての研究と発信を行っており、ニューヨーク・タイムズ紙、ワシントン・ポスト紙・ウォール・ストリート・ジャーナル紙など。多数のメディアに記事が掲載されている。ビル&メリンダ・ゲイツ財団のアドバイザーも務める。

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まとめ

体系的な学習には以下の6つのアプローチが必要である。

価値を見いだす – Value
目標を設定する – Target
能力を伸ばす – Develop
発展させる – Extend
関係づける – Relate
再考する – Rethink

価値を見いだす – Value

意味の価値は脳にルーツがある。私たちの心は豊かで複雑な存在であるが、物語の語り手のようなものとして活動している。

意味は私たちが創り出さなければならないものだからだ。人は世界に自分なりの意味を見だす。〜 不思議なことに、意味が持つ力は過小評価されがちだ。人が求めているのは結局のところ「意味」であり、その意味は自分自身で発見しなければならないのだということを、私たちはともすれば忘れてしまう。

物事の「意味」や「価値」は人それぞれ、自ら作るもので、それこそがモチベーションの源泉になる。この「人が意味を作る」という話は物語論につながるなあ、と思う。結局のところ人生は物語論に行き着くんじゃないかと感じることが最近多い。

学ぶ対象が、自分に関連性があると思うことが大切で、逆に学ぶ対象の価値を認識することができれば、それはモチベーションとなり学習が苦ではなくなる。~探究心は「情動のシステム」だという。

つまりはまず能動的な価値の発見が必要で、意図して自分の(または他人の)知的欲求をくすぐることが極めて大切。やりたいことは勉強したくなりますもんね。

目標を設定する – Target

何も考えずに学習してはいけない。〜学習の入り口の段階では、プロセスをしっかりと管理する必要がある。学習とは要するに一種の知識の管理である面も強い。
学習の前段階で大切なことは、知識がどのくらい必要かを認知すること。その後、効率的な学習には効率的な学習計画が大切になってくる。

知識は学習の土台と考えてほしい。〜脳は新しい情報を以前からある情報と「束ねる」。古い知識を使って新しい知識の理解を助けるのである。〜知識のネットワークがすでにあれば、そのネットワークに新たな知識を加えるのは簡単だ。

この「ネットワークの更新」こそが学習だと筆者は述べる。そして更新の目安として一番大切なことは「ちょいムズ」、つまり理解していないものの中で最もやさしい題材を学ぶ時だそうだ。この辺りは感覚的にわかりやすい。段階的な学習が一番体系的という当たり前の話である。

人は自分に厳しい目標設定が必要だ。〜(その一方で)人は学べるという実感がなければ学べない。

人間は人間、理屈と厳しい目標だけでは学べない。これが「ちょいムズ」の大切さだ。

能力を伸ばす – Develop

フィードバックの循環に入って、体系的にスキルに磨きをかけなければならない。
わかってないが故にわかっていないところがわからないというのが初心者で、そこを抜けて自分自身の伸ばすべき能力、知識を把握するようにならないといけない。

なぜ学習プロセスにはこのような知的苦痛が必要なのか。〜優れた学習にコンフォートゾーンはない。〜専門分野を身につけるには反復が必要だということだ。

ここで、映画監督クエンティン・タランティーノの話が出てくる。なにかを身に付けようとしたら、「痛み」を覚悟して反復することが大切。それに耐えうるモチベーションが必要。タランティーノといえば監督になる前に相当な映画オタクだったことが有名。ウルフオブウォール・ストリートは個人的に大好きな映画です。

また反復の方法として検索練習というものが出てくる。

検索練習
ある記憶を自分に質問して思い出せるかどうかを確認する、という手法である。単語帳を覚えたのち、電車や信号待ちなどふとした瞬間に自分に問いかけること。

発展させる – Extend

学習とは知識の発展、専門知識の領域の拡大とも言える。〜最も大事な概念を要約することによって、その概念への理解が深まり、その概念に意味が生まれる。

この話から、以前話したアクティブラーニングと同じで学習とは0から1を出すものではなくて、知識と知識を結びつけることという話につながっていく。学習は統合され「ネットワーク」となる。

人間の脳は抽象が苦手だ。

本を読むだけでなく、手を動かすこと、フィールドワークをすることがとても大切だと言っている。実体のある、具体的なものをいかに反復して抽象化していくか、ということ。

知識領域の拡大にはある種の創造性が求められるのだ。

学習する対象が不確実性を持っていることを受け入れる感性が大切であり必要。極論、世界の複雑さを理解することが学習だと筆者は言う。そして常にこの世界に疑問を持ち続けることが学習を助ける。この辺りは「確率思考」に通じるものがある。

関係づける – Relate

知識習得とは突き詰めれば知識構造同士のつながりを理解することである。


学習効果、知識の取得において大切なことは、「関係性を考える」こと。知識の間に関係性を持つことは、様々な角度から物事を見ることにも繋がり、少ない証拠からくる過度な一般化を避けることに繋がる。構造主義的な考え方だ。事象は他のものとの関係性の間の中で相対的に決まる、学習はそれを学ぶことなのかもしれない。

再考する – Rethink

確信は効果的な学習をおおいに阻害する。自分を確信していると、人は勉強しない。練習しない。

謙虚であることが非常に大切で、また知的苦痛をもって学習することが非常に大切。「TEDトーク」は学習した気になるが、すぐわすれてしまう。

個人的感想として、知的苦痛はすごい大切だと思う。楽に学べるものは誰でも学べることなので、差はつかない。繰り返しの大切さとして「再考」の方法が紹介されている。

分散学習
一点集中型勉強ではなく、学習を時間的に分配することは効果がある。単純接触効果のようなものかなと思われる。語学とかもそれが大事だったりする。

内省
自分のスキルや知識を理解するために、その経験を考え抜くことや空想をすることが大切。そのために静かなひととき、落ち着いた休憩を過ごすことが効果的。自分の知識の再評価は常に必要で、内省に終わりはない。検索練習に近い。

終わりに

かなり読み応えのある、要約が重たい本ではあるが、「学び」について体系的に学ぶことのできる良書だと思う。念頭に置いて、これからも「Learn Better」していきたい。

スモールスタートとして、

・「価値を見出す」
・「分散学習」
・「内省」 – 検索練習

は始めやすいと思う。

成功をつかめるのは、勝てると信じ、勝利をめざして準備してきた者だ。勝ちたい人間は大勢いる。だが、準備するものはどれだけいるか。その違いは大きい。

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