日々の学び:藤澤清造『根津権現裏』

2月に急逝した西村賢太の本を読み、文學界を読み、藤澤清造に行きついて拝読。貧困・卑屈な内省・悪態と西村賢太の小説を古い言い回しで読んでいるような小説であった。没後弟子を名乗っていたことがよくわかるぐらいに作風が近い。

あとがきにあるように田山花袋『布団』を始めとする古典的な私小説からは大きく離れている。藤澤が元々戯作者だったらしく、そこが従来の私小説=自然主義作家との一番との違いらしい。物語自体がただの「恥ずかしい自分の告白」に終わらない卑屈に見えたパロディカルな言い回し、深い内省によって彩られている。

清造の場合、自らの古風、かつ独自の文体をより強固に支えるべく、ここに戯作者の精神を持ってきていることが、凡百の自然主義作品をは大きく異なっているのである。

藤澤清造『根津権現裏』解説より

貧困生活の中で足を悪くし、治療費も払えず、世間に悪態をひたすらつく描写は痛々しくリアルさがある。自殺した友人岡田についての考え・心境を語るシーンは、一見退屈と受け取ることもできるが、その描き方こそがパロディカルで読み応えのある部分になっていて、藤澤のシャイな人間賛歌のように感じた。

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