日々の学び : ターリ・シャーロット『事実はなぜ人の意見を変えられないのか』


本サイトでは”現役スポーツアナリスト”の「日々の学び」をブログとして書き残していきます。

一応アナリストという仕事をしていると、「整合性」や「論理」、「ロジカル」などと言った言葉をよく使い、使われる。言葉でうまく表現できませんが、そこへの懐疑心がある。

さて、原題『The Influential Mind』を読んだ。邦題がやや内容と乖離している気がするが、人間の心理や行動学に関するビジネス書だった。実践は難しいですが、いくつか学びがあったのでまとめていく。

事前の信念と確証バイアス

もしあなたが自分のことを、推論能力に長けていて数量に関するデータの扱いを得意とする、きわめて分析的な思考の持ち主だと考えているのなら、お気の毒さま。分析能力が高い人の方が、そうでない人よりも情報を積極的に歪めやすいことが判明している。

「事前の信念」、つまり元より信じている意見や思想を誰しも持っているわけだ。先入観と言ってもいいかもしれない。人間は基本的に「事前の信念」を肯定するデータや証拠なら即座に受け入れ、反対のものは低く評価する傾向がある。これを「確証バイアス」と呼ぶ。

それどころおか人間は反対意見が来ると、その反対意見への反論を思いつき、「事前の信念」をより強固にする傾向がある。とすると、人を「説得する」ためにはむしろ「説得する」というより共通の同期を見出し、感情に訴えかけられるメッセージを送ることとなる。

主体性- 選択と報酬の関係

自分のいる環境を人にコントロールされると多くの人がストレスや不安を感じる。例えば税金、主体的に払うことができず、義務であるために脱税が常に存在する。矛盾しているように感じるが、他人の行動を変えたいときはむしろ権限を与えることで主体性とコントロール感を与えることが一番効果的だそう。

なぜ私たちは主体性を好むのか。これは自分の好みとニーズを一番自分が理解しているため、自分でコントロールできる環境の方が高い満足度をもたらす。例えば自分が好きな映画は自分が一番よく知っているということだ。

この自由選択の結果が好ましいという経験が繰り返されるうちに、自由選択自体が報酬になってくるそうだ。それゆえ、主体性という人参を人の前に吊るすことが大切になってくる。一方で選択肢を与えすぎると何も選べなくなるため、ある程度選択肢を絞ることも気をつけなければいけない。

相手が知りたいこと

猿の実験の話が出てくる。特定の記号の後に多めの量の水と少ない量の水を出すと、多めの量の水がでる記号を見ただけで猿の脳が興奮を示すそうだ。つまり情報は行動するかという決断ばかりでなく、その時の感情に強い影響を及ぼす。情報は信念に影響を与え、信念は幸福に影響する。また基本的に人間は希望をもたらす情報を求め、失意を招く情報を回避する傾向をもっているため、私たちが人に提供しようとしている情報が暗い見通しと結びついていると人々は耳を貸してくれない。

ストレスとリスクテイク

人間はストレスを受けると、危険感知に固執するようになり、うまくいかない可能性に目を向けがちだ。スポーツでいうなら弱小チームほど保守的な戦術・戦略を選んでしまいがちになってしまう。そうなってしまうと、リスクを冒すことの方が実際には優れた選択であっても、選択できない。人間の心理もある意味生理反応なので、常に意識して心の反射的な反応を克服したいものだ。

無意識の社会的学習と「個性」

人には周囲の人々から学ぶ性質を身につけている。となると自分で考えたはずの「個性的」な選択は自分の考えからのみ作り出されたものなのだろうか。

たとえばトリップアドバイザーなどの口コミなどでは最初に高評価のレビューを投稿するとそれに続くレビューが総じて好意的なものになるそうだ。また最初のレビューのようなバイアスが一度かかると思い込みを修正するのはかなり困難になるらしい。

終わりに

アナリストという仕事をしていると特に確証バイアスは気をつけなければならないな、と強く感じた。結論ありきの理論武装が意識決定に関わるとみんなが不幸になる。

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